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第五回 三次元スピーカー



 ● 色も仕上がりも見事なピアノフィニッシュ

 8月末のオーディオワールドの二日前にワインレッドカラーのピアノ仕上げの試作キャビネットが3組出来上がってきました。実は中国製なんです。それも人を介して注文したもので、私が直接製造担当者と打ち合わせる事無しですから、手元に届くまでは心配で仕方ありませんでした。

 何とか10万円以内で発売したいと思い、八方手を尽くしてみましたが、ピアノ仕上げのキャビネットだけでも日本で作るとなると5万円以上も掛かってしまい、到底不可能という事が分ってきました。ほんの少数の拘り派のローゼンクランツファンだけに向けてでしたらそれも理解を得られるかもしれませんが、今回はもう少し裾野を広げ、多くの音楽ファンの方達に楽しんで頂く事が大きな目的です。音はもちろんの事、デザインと仕上げの美しさも最高の物を目指しています。そんな欲張りな考えを達成する為にはコストの安い中国や台湾に眼を向けるしか方法が残されていなかったのです。

 ● 恐るべしは中国の技術力

 今までの経験上、物作りの大半は期待を下回る事の方が多いのですが、今回のその仕上がりは見事なもので本当に驚いてしまいました。恐るべしは中国の技術力です。

 喜んで良いのか、悲しむべき事なのか、ちょっと複雑な心境です。後で聞いた話ですが、その箱を作ってくれたところは世界の名だたるブランドのスピーカーエンクロージャーを一手に引き受けている会社だったのです。素晴らしい出来栄えの裏には、それなりの理由が潜んでいたのです。

 車然り、電気製品然り、あれよあれよという間に中国は力をつけ、今や世界の物作りの一大拠点となってしまった感があります。かつての日本だってそうでした。メイドインジャパンといえば安物の代名詞でしたが、今では世界の中でも一番高い評価と信頼を得るまでになっております。基本的にアジア人は勤勉で辛抱強いので物作りには向いているのでしょう。 

 当然その日の内に先ずワンセット組み上げました。スピーカーユニットに始まり、スピーカーターミナル、アッテネーター、どの部品も見事なほどにピタリときれいに取り付けることが出来ました。前回の試作機(無塗装状態)では吸音材無しでは良い音にならなかったのですが、ダメ元でとりあえず吸音材無しで聴いてみる事にしました。

 ● いきなり、”とんでもない凄い音”が出た!

 それがいきなり、”とんでもない凄い音”が出たのです。一番初めの設計段階では吸音材無しで鳴るはずとの目論見でスタートしたのですが、途中でその計画は無理かな?と多少なりとも気持ちが諦めの方向に向いていたものですから本当にビックリです。当初のイメージよりはるかに上回る音になったのには当の私自身が一番驚きました。

 ● エンクロージャーに奇跡が起こった

 スピーカー設計者が口を揃えて言うのは「キャビネットは鳴いてはいけない」です。理想は分りますが、物凄いエネルギー振動で動くスピーカーを取り付けてある限りは、”どだい無理な事”と思っておりました。ですから今までの私の考え方としては、どうせ鳴くのなら一緒にハモッテ鳴く方法を見つけるのが一番現実的と・・・。

 それがこの箱は全くといってよいほど箱が振動しないのです。だからサイズからは信じられないような低音が出るのです。そうした考え方に対して、どちらかというと否定的立場を取ってきた私が実現してしまったのですから本当に皮肉な話です。

 無茶と思えるほどボリュームを上げても、スピーカーユニットから歪んだ音が出ません。どこまでもスピーカーが芯を喰っているのでしょう!?。それも、これも、「音のカラクリ」の研究の賜物でしょう・・・。インシュレーターにおける、「振動の時間軸」の飽くなき追及が可能にした事と思っております。 

 この三次元スピーカーから出て来るのは音楽のエネルギーだけです。それ以外のまとわり付く付帯音は全くといってよいほど皆無です。こんな事は生まれて初めて経験
する出来事です。正にスピーカーの革命が起こったといっても過言ではありません。この音の感覚はローゼンクランツのインシュレーターが、振動を瞬間にクラッシュアウトさせてしまう時の音と同じなんです。

 ● 三次元スピーカーの音にはみんな釘付け

 オーディオワールドでの最終モデルのお披露目の日がやってきました。私達の部屋は神田明神の会場の中でもあまり広くないほうでしたのですぐに満員になりました。ドアーを開けた目の前には人の背中しか見えないような状態です。それにあきらめて戸を閉めて出て行く人が相当数いました。最前列の方などスピーカーの目の前50センチの位置になります。

 それでも、音が頭の上を通過するような高さにマイクスタンドで持ち上げていますから、部屋のどこにいても反射拡散された音が届くようになっております。その不思議な音の出方と拡がり方にどなたも驚いたようです。当然です、スピーカーの位置は理想の位置の候補からすれば4番手ぐらいではありますが、部屋の空気を効率良く最大限に動かすポイントにはキチンと設置していますので、音の直接音と間接音との重なり具合においては完璧なのです。すなわち「カイザーウェーブ」に上手く乗せているからなのです。

 前回エンゼルポケットでデモをした時にお会いした方もちらりほらりいらっしゃいました。その方達にとっては比較する材料を持っていますから、その音の進化ぶりが如実に判断出来る訳です。今回の音の素晴らしさに惚れ惚れとしているようです。『その音に満足しております』といった気持ちを目の表情に精一杯込めて、私にシグナルを送って下さる方も数人ありました。上々の滑り出しです。

 ● 度肝を抜くような重低音

 こんな小さなスピーカーでそんな音がするはずない!。今回のデモのポイントはそうした意外性というところを訴えようとしました。冒頭から度肝を抜くように、打ち込み系の重低音が入ったソフトを、今にもスピーカーが壊れんかとばかりパワーをぶち込んで鳴らすのです。想像を絶するような重低音が部屋中に充満します。まるでどこかにスパーウーハーを仕込んでいるかのような音です。

 この時に最前列の方に協力して頂きます。「すみません!、ちょっと立ってスピーカーの箱に手を触れてみて頂けませんか?」。「如何ですか?、これだけの大音量ですが、箱は全くといってよいほど振動していませんでしょう?」。『はい!、その通りです』。「どなたでも結構です、ご興味のある方は前に出てご自分の手で実際に直接触れてみて下さい」。するとゾロゾロと何人もの方が前に出て天板や側板に手を当ててみます。

 MDFという本来なら私があまり好まない素材を使って実現してしまったのですから、本当に、この世の中何が起こるか分りません。それも初めての試みですから、正に”運も実力の内”の諺を地で行ったようなものです。

 私はこの三次元スピーカーの音を、世界中のスピーカー設計者の方達に聴いて欲しいと思います!。

 ● ピアニシモが一段と素晴らしい

 そうです、最小の力(エンクロージャーサイズ)で最大のエネルギーを取り出せることに成功したのです。前回の試作機ではf0フィルターの威力が物凄く出たのですが、今回の物に限ってはフィルター無しでも相当凄い低音まで再生可能です。

 次から次に波状攻撃のように襲ってくる音楽振動に対して、箱全体の振動移動がまるで生き物のように素早くサイクル運動し、ユニットと箱のフットワークが一体化するのです。箱の8面全てが一つとして同じ振動をしないように設計してあることと、内も外も満遍なく塗り固めた塗装が最後に効いたんでしょうね。

 そうですね!、この迫力充分な鳴りっぷりには会場に居合わせた皆さん信じられないのは当然でしょう。私だって戸惑っているんですから!・・・、今の今、こうして音を出しながら・・・。これだけ付帯音なく音楽信号だけを忠実に出せるのは、実はピアニシモに優れているという事とイコール関係になるのです。

 今度は一転して聞こえないほど音量を絞り込みます。次第次第に集中力が上がって来ますから、どんな微弱音も聞き逃さなくなります。仕事で夜遅く帰宅した後でも、ボリュームを絞った状態で、ダイナミズムを失う事無く好きな音楽を心行くまで堪能して頂けるのです。

 ● 試聴会も考えております

 オーディオワールドでの「三次元スピーカーの音の凄さ!」が、うるさいマニアの間で飛び火し、ちまたで語り草になっているようです。発売日までにはエンゼルポケットで2〜3回は試聴会を開いてみたいと思っております。


 興味のある方にとって気になるのは発売日でしょう。
 今のところはまだハッキリしていませんが、
 遅くとも11月末位には皆様のお手元にお届け出来ると思います。
 ユニット、箱共に量産体制に入るべく大量発注した所です。
 価格は84,000円(1ペアー税込み)に決まりました。



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